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深夜に読むと少し後悔する怖い話。

処方箋|読み終わったあと気持ち悪くなる話

【ホラー短編】処方箋


私が頭痛に悩まされ始めたのは、30代に差し掛かった頃だった。原因不明の鋭い痛みが続くたびに、近所の病院を訪れるようになった。待合室で座る時間が日常の一部になっていた。

ある日、いつものように待合室で順番を待っていると、壁に掲示されている写真に目が留まった。そこには、知らない女性が笑顔で写っていた。華やかに笑うその姿に、私はどこか引き込まれるものを感じた。しかし、特に気にすることもなく、そのまま待っていた。

だが、その日は違和感が残った。待合室にいる間、何故かその女性の目線が自分を追っているような気がした。他の患者たちは特に気にする様子もなく、写真を一瞥する程度。自分だけが特別に意識しているように感じ、少し不安になった。

後日、再び病院を訪れた際、またあの写真を目にした。今回は少し異なっていた。写真の女性が着ていた服が変わっている。顔や笑みは同じなのに、何かが微妙にズレている。それに気づいて、私は妙な予感を覚えた。

待合室には他に数人が座っている。隣に座っていた老人が「彼女、最近よく見かけるね」とぼそりとつぶやいた。それを聞いて、ますます気になった。どうして皆が見ているのに、誰も変化に気づかないのだろう。

その夜、自宅で頭痛が再び襲ってきた。仕方なく薬を手に取り、処方箋を確認した時、ぞっとした。「彼女の名前」がしっかりと処方箋に記されていた。頭の中で、待合室の光景が重なった。あの女性は、他の誰でもない、待合室の常連だった。

急に意識が遠のき、次の瞬間、気づくと私は病院の待合室に座っていた。周りを見渡しても、誰もいない。何かがおかしいと恐怖が駆け上がる。手元には新しい処方箋が握られていた。そして、その処方箋には「次の診察日」とともに自分の名前が記されていた。

急に後ろから気配がする。振り返ると、あの女性がぎこちない足取りでこちらに向かってきている。笑顔は消えて、まるで自分の居場所を取り戻すかのような表情だった。彼女の手に持たれた処方箋が、私の命の処方箋であるかのように感じた。

その瞬間、私は理解した。彼女は、私の次の患者だったのだ。

彼女が近づいてくるにつれ、彼女の目には異様な光が宿っていた。私の心臓の鼓動が高鳴る。彼女の手が私に触れる瞬間、待合室のドアが音もなく閉じた。彼女の口元が微かに動き、何かを囁くように見えたが、音は聞こえない。ただ、その唇の動きから、はっきりと「次はあなた」と読めた。

その時、私は全てを悟った。彼女は私の命を奪いに来たのだ。そして、その事実に気づいた瞬間、私の意識は再び遠のいた。気づくと、私はまた待合室に座っていた。手には、また新たな処方箋が握られている。そして、そこには「次の診察日」とともに、新しい名前が記されていた。


管理人の考察

この話、ほんとにゾッとしましたね。病院という日常的な場所が、いつの間にか恐怖の舞台になってしまう様子が、じわじわと迫ってくる感じがたまりません。

物語の初めから、主人公が感じる不安感は読者にも伝わりやすいです。「知らない女性の笑顔の写真」という一見普通の風景が、徐々に狂気を孕んでいくのが怖いです。普段は安心を提供してくれる待合室が、実は恐怖の象徴になるなんて、こんなギャップがあるからこそホラーは面白いですよね。

また、写真の変化が示す「時の流れ」と「運命」の無常さも印象的です。同じ顔を見る中で何かが変わっていくことは、主人公が無意識に病院の一部になっていくことを意味しているのかもしれません。特に、最初はただの痛みを和らげるために通院していた主人公が、次第に「彼女」との運命的な関係に引き込まれていく様子は非常に不気味です。

そして、最終的なオチへの展開が秀逸です。主人公が気づいた瞬間、自身がその女性の次の患者になるという事実は、恐怖のピークに達します。「次はあなた」という言葉が示すのは、単なる次の診察日ではなく、命のサイクルそのもの。彼女が自分の命を奪いに来たという認識が、主人公をさらに絶望的な状況に追い込むのです。これはまさに「生」と「死」の狭間にいる感覚を読者に与えます。

ここで考えられる解釈もいくつかあります。一つは、主人公が頭痛に悩まされていること自体が、彼女との運命的な結びつきを暗示しているのかもしれません。彼女の存在が、実は主人公の病気の具現化であり、心の奥底に潜む恐れや不安が形を持ったものなのかもしれません。もう一つは、病院自体が人間の運命を操る場所であるという見方です。病院の待合室は、患者たちが次第に自分の運命を受け入れていく場所とも考えられます。

この作品が描くのは、まさに人間の無力さと、運命に抗えない恐ろしさです。結局、どんなに逃げようとしても、私たちは過去や運命から逃れられないのかもしれません。最後に、読者の皆さんが待合室での一瞬を想像するとき、周囲の温もりや安心感が徐々に消えていく様子に、寒気を覚えることでしょう。次に病院に行く際は、あの女性がどこかにいるのではないかと、ふと考えてしまうかもしれませんね。

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