怖バズ

深夜に読むと少し後悔する怖い話。

携帯|読み終わったあと気持ち悪くなる話

【ホラー短編】携帯


私が東京の端にある小さな駅の近くに住んでいた頃の話です。

当時、私は都心から離れたその駅で働く若いOLでした。毎日、仕事が終わるのは夜遅く、駅に着くのはいつも終電近く。ホームは静かで薄暗く、ひと気がありませんでした。仕事のストレスを抱えながらも、その静けさが心を落ち着けてくれるので、私はこの駅が好きでした。

ある晩、駅のホームで電車を待っていると、携帯電話が鳴りました。知らない番号からの着信。時間はちょうど23時でした。最初は間違い電話だろうと無視しました。でも、翌晩も同じ時刻に同じ番号から電話がかかってきました。さらに数日後、また同じタイミングでかかってきました。少し不気味に感じながらも、気になって受け取ってみました。

受話器を耳に当てると、相手は無言。冷たい空気が耳を刺すような静けさでした。

その後も毎晩のように着信が続きました。ある晩、ホームでいつものように電話が鳴り、受け取ると、微かに「助けて」という声が聞こえました。私は恐ろしい気持ちになり、すぐに電話を切りました。

それから数日後、駅の近くで流れていたニュースを見て驚きました。数年前、この駅で女性が行方不明になった事件があったそうです。彼女は夜遅くに駅で姿を消したといいます。その女性の特徴が、不思議と私とよく似ていると感じました。さらに驚いたのは、その着信の番号と私の携帯番号が、一文字違いだったことです。一層不安を感じながらも、これはただの偶然だと思い込もうとしました。

その夜、再びその番号から着信がありました。恐る恐る電話に出ると、今度ははっきりと「私がここにいる」と声が聞こえました。私はいてもたってもいられず、振り返りました。

ホームの端に、私にそっくりな女性が立っていました。彼女の目は私をじっと見つめていました。冷たい風が吹き、彼女の髪が揺れました。

その瞬間、理解しました。行方不明になった彼女は、ここで私に気づいていたのです。

私は恐怖で凍りつきました。その時、再び携帯が鳴りました。画面を見て、血の気が引きました。そこには「あなたの番号」と表示されていました。振り返ると、先ほどの女性が私に向かって歩み寄ってくるのが見えました。そして、その顔は間違いなく私自身でした。

その瞬間、私は理解しました。私はもうここにはいないのかもしれない、と。そして、彼女の手が私の腕に触れた瞬間、私の意識は急に薄れていきました。視界がぼやけ、周囲の音が遠のいていく感覚がしました。

気がつくと、私はホームの端に立っていました。しかし、周りには誰もいません。私の携帯は、今もその番号から鳴り続けていました。恐る恐る画面を見つめると、「あなたの番号」という表示が光っていました。その瞬間、背後から冷たい手が肩に触れ、振り返ると、そこには私の顔が笑っていました。


管理人の考察

この作品は、何気ない携帯の着信から始まりますが、徐々にその恐怖が積み重なっていく様子がじわじわと怖いですね。主人公の女性が、日常の中で感じる「不気味さ」が彼女の運命を変えてしまうという構図が印象的です。

まず、この話の読みどころは、普段の生活の中に潜む恐怖の種です。主人公は駅という日常的な場所で、誰もいない静けさを心地よく感じながらも、次第に違和感に気づき始めます。そこに「知らない番号からの着信」という不安要素が加わることで、彼女の心に緊張感が生まれ、読者も同じような不安を抱くことになります。このように、日常の中のちょっとした「異変」が大きな恐怖につながる構造が秀逸です。

また、「助けて」という声が聞こえるシーンは非常に効果的です。最初は無言から始まり、徐々に具体的な言葉が出てくることで、恐怖が一層増します。声の主が不明であることが、主人公にとっての恐怖を増幅させ、読者にもその恐怖が伝わります。さらに、行方不明になった女性とのリンクが明らかになることで、主人公がその女性と同じ運命を辿っている可能性が浮かび上がり、非常に恐ろしい展開に。

オチの部分では、主人公が自分自身と対峙する形で、彼女の運命が暗示されます。「あなたの番号」という表示が、彼女がすでに別の存在になっていることを示唆し、最後の一文でその状況が強調されるのが絶妙です。ここでの恐怖は、実体が同じなのに自己が他者として現れるという、不気味な状況です。誰もが持つ「自分」という存在が、他者になり得るという可能性が、読者に深い恐怖を与えます。

さて、いくつかの解釈を考えてみると、まず一つは「自分の運命は自分で決められない」というテーマです。主人公は自分自身が消えてしまう運命に抗えない無力感を感じています。もう一つは、現代社会における孤独感。人々がつながっているようで、実際には孤立している状況が、携帯の着信という形で象徴的に表現されています。そして最後に、「知らないものへの恐怖」が、知っている自分自身に対する恐怖へと変わっていく様子が、心の奥底に潜む不安を呼び起こします。

この物語の恐怖は、普段の生活の中で自分自身が消えてしまうという非常に人間的な恐怖に根ざしています。誰しもが感じ得る不安が、主人公を通してリアルに描かれているからこそ、余韻が残るんですよね。読み終わった後、ふと振り返りたくなるような、そんな恐ろしさがこの作品にはあります。皆さんも、夜の駅で一人のときは、携帯電話の着信には気を付けた方が良いかもしれませんね。

次の怖い話を探したい方はこちら

あわせて読みたい怖い話