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深夜に読むと少し後悔する怖い話。

通帳|読み終わったあと気持ち悪くなる話

【ホラー短編】通帳


タイトル:
通帳


私がコンビニで深夜のアルバイトを始めたのは、大学に入ったばかりの頃だった。夜は静かで、客はまばら。すぐにその環境に慣れたが、最近、店内で不可解なことが起こるようになった。

夜勤中、暇な時間にインターホンの録画を確認するのが習慣になっていた。ある晩、録画に映る一人の女に気づいた。彼女は店の外で立っているだけで、無表情で動かない。毎晩、同じ時間、深夜2時ちょうどに必ず現れる。最初は気のせいかと思ったが、確認するたびに違和感が増していった。

彼女の服装や髪型は毎日微妙に異なるが、その無表情は変わらず、何かを訴えているように見えた。同僚に話すと、「ストーカーかもな」と冗談混じりに返され、少し不安になった。

ある晩、いつものように録画を見返していると、彼女がカメラに向かって手を振るのが見えた。驚いて背後を振り返ったが、店内には誰もいない。その瞬間、インターホンが唐突に鳴り響き、心臓が止まりそうになった。

録画を停止し、もう一度最初から見直した。しかし、女はやはり無表情のままで、ただじっと立っている。そして、彼女が店内を見つめていることに気づいた。録画の日付は、私が働き始めた日と一致していた。

ふと録画の中で彼女が手にしているものに目が止まった。彼女の手には、見覚えのある通帳が握られていた。それは紛れもなく、私の名前が書かれた通帳だった。

「どうして…?」私は震えながら呟いた。次の瞬間、店内の照明が瞬間的に消えた。真っ暗な中、微かな笑い声が耳元で響いた。その声は明らかに彼女のものだった。

灯りを戻すと、目の前のレジの上に、私の通帳が開かれていた。通帳の中には「いつも見てるよ」と赤いインクで書かれている。背筋が凍る思いで振り返るが、誰もいない。インターホンが再び鳴り響く。

私はドアに駆け寄り、乱暴に開けた。外には誰もいない。膝が震え、立っていられなくなった。

その時、背後で再びドアが開く音がした。振り返る暇もなく、冷え切った手が私の肩に触れた。

そして、私は気づいてしまった。録画に映っていた女、それはかつて私が関わった事故で失ったはずの彼女だった。彼女は私の恋人で、あの日、私の不注意で命を落とした。罪悪感を抱えたまま、私はそれを心の奥に封じ込めていた。

彼女は、無表情のまま、口元が不自然に広がり、真っ黒な目で私を見つめていた。彼女は私を逃すことなく、微笑みを浮かべて静かに私を招き入れた。心臓が凍りついたまま、私はその場に倒れ込んだ。冷たく重い空気が私を包み込み、彼女の声が耳元で囁いた。

「もう逃げられないよ。」

薄暗い店内で、彼女の姿が私を取り囲むように増えていく。全ての彼女が同じ無表情で、私を見つめていた。恐怖で視界がぼやける中、私は意識を手放した。


管理人の考察

この作品は、深夜のコンビニという身近な舞台を使って、私たちの心の奥に潜む罪悪感や恐怖を巧みに引き出しています。主人公が体験する異変は、徐々に彼の内面と結びついていく様子が描かれていますが、特に印象的なのは、彼女の無表情に込められた意味です。

物語の冒頭で、主人公が確認しているインターホンの録画は、彼にとってただの映像ではなく、過去の罪を映し出す鏡のような存在になっています。毎晩同じ時刻に現れる女の姿は、彼女の死を無視し続けている彼への警告とも取れますし、彼の内なる精神状態を反映しているのかもしれません。彼は彼女の存在を恐れつつも、内心では彼女を忘れたいと思っているため、無表情の彼女が何を訴えかけているのかが物語の核心になっています。

特に恐ろしいのは、周囲の人々がその異変を軽視し、冗談として扱うところです。この無理解が主人公の孤独感を一層深め、彼女の存在がますます圧迫感を増していきます。彼が独りでその現象と向き合わなければならない状況が、リアルな恐怖を生み出しています。

オチでは、彼女が過去の恋人であることが判明し、彼の心の傷が具現化する瞬間が非常に衝撃的です。彼は彼女の死によって罪悪感を抱え、彼女の存在を心の奥に封じ込めていた。しかし、彼女はその封印を解き、再び彼を呼び寄せることで、さらなる恐怖を彼に与えるのです。この点が、ただのホラー話ではなく、心理的な深みを持った作品としての魅力になっています。

最後に、彼女の冷たい手が彼の肩に触れる瞬間。これは、彼が逃げられないことを象徴しています。彼は彼女の存在から逃れられず、その罪を背負って生き続けることになる。彼女が彼を取り囲む姿は、過去が彼を捉え、解放されないことを意味する恐怖のビジョンです。

この作品は、私たちが直面することのない死や罪悪感が、どのように日常生活の中に潜んでいるのかを考えさせられる一作です。そして、何よりも恐ろしいのは、私たちの心の奥にある未解決の問題が、いつか確実に顔を出す可能性を示唆しているところです。心に残る余韻が、恐怖を一層深めてくれる作品でした。

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