チャット
【ホラー短編】チャット
タイトル: チャット
私が大学生だった頃の話です。一人暮らしをしていました。SNSで友達と連絡を取るのが日常でした。特にDMは毎日のようにチェックしていました。夜更かしが多かったので、深夜に友達から送られてくるメッセージや写真をいつも楽しみにしていました。
ある晩、友達から写真が送られてきました。友達が楽しそうに笑っている写真です。でも、背景に見知らぬ人物が立っていました。私は「誰かの友達かな?」と思い、特に気にはしませんでした。
しかし、その後も友達から送られてくる写真には、必ずその人物が写っているのです。同じ顔がどの写真にもありました。気になって友達に「この人、誰?」と尋ねました。
「そんな人いないよ」と、みんな不思議がるばかりで、少し怖くなってきました。
その違和感が続いたある日、私は自分の写真を撮りました。そして友達にDMで送りました。すると、送信直後にその見知らぬ人物から「いいね」がつきました。驚いてそのアカウントを確認しようとしましたが、そんなアカウントは存在しませんでした。
再び友達に確認しましたが、「やっぱりそんな人いない」と言われました。どうにも説明がつきません。次第に恐怖心が募ります。
その日の夜、私はDM画面を何となく眺めていました。すると、送信履歴に見慣れない名前が並んでいたのです。自分の名前が、その見知らぬ人物として表示されていました。
自分自身を見つめていたのかもしれません。それっておかしくないか、と私は自問しました。まるで知らない自分が、どこかで監視しているような感覚です。それ以来、私はSNSを極力使わないようにしています。
管理人の考察
この作品を読んで、背筋がゾッとしました。SNSの無機質な画面の向こう側に潜む恐怖が、見事に描かれていますね。
物語の主人公は、大学生として友人とのコミュニケーションを楽しみながら、日常を過ごしています。しかし、そんな日常が一変するのは、友人から送られてきた写真に見知らぬ人物が写り込んでいることに気づいたときから。こうした違和感が徐々に恐怖に変わっていく様子は、SNSの使い方に対する警鐘とも受け取れます。
この作品の読みどころは、やはり違和感の積み重ね方です。最初は「誰かの友達かな?」と軽く流していた主人公が、次第に事態の異常さに気づき、恐怖心が募っていく様子が丁寧に描かれています。特に、自分の写真を送信した直後に現れる「いいね」や、自分の名前が見知らぬ人物として表示される場面は、SNSという現代社会の特殊性を強調し、日常的に使っているツールがいつの間にか自分を侵食しているかのような不気味さを感じさせます。
この話が怖い理由をいくつか考えてみましょう。一つ目は、「見えない自分」との対峙です。DMの画面を通じて、自分自身が他者から見られているという感覚が、いつの間にか別の自分を作り出しているというのは、現代社会のSNSやネットの匿名性に通じるテーマです。見知らぬ人物が主人公自身の分身であるかのように描かれることで、「自分とは何か」という問いかけが生まれ、読者に不安を与えます。
二つ目は、監視の恐怖です。SNSを介して他者が自分の生活に入り込み、見えないところで監視しているという感覚は、現代人が抱える一種の不安感を反映しています。知らない誰かが自分を見ているというのは、想像以上に恐ろしいことです。主人公が感じる違和感は、実は私たち全員が日常的に抱えている心理的な緊張感を象徴しているのかもしれません。
最後に、オチについてですが、主人公が自分自身を見つめるという行為は、自己認識の危うさを示しています。自分が自分であることの不安定さ、それが具現化したときに生まれる恐怖を巧みに表現しています。このことにより、物語は単なるホラーにとどまらず、個人のアイデンティティを問う深いテーマへと昇華されています。
この作品を読んだ後、私たちがSNSを使用する際の心境に少しでも影響を与えられたらと思います。見えないところで何が起こっているのか、その「誰か」を気にしながら、今一度、私たちのデジタルライフを見つめ直す時かもしれません。
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