怖バズ

深夜に読むと少し後悔する怖い話。

リモコン

【ホラー短編】リモコン


私が初めてゲーム実況を始めたのは、仕事のストレスで心が押しつぶされそうだったからだ。

一人暮らしのアパートで、夜遅くに配信アプリを開いて、画面の向こうにいる視聴者たちと話す。それが、唯一の楽しみだった。

初めての配信で「後ろにいるよ」とコメントが来たとき、視聴者の悪ふざけだと思った。でも、配信を続けるうちに、背後から小さな物音が聞こえるようになった。

気のせいだと思い、ゲームに集中しようとしたが、音は次第に大きくなっていった。視聴者のコメントは増えるばかりで、「リモコンを取ってきて」と何度も書かれていた。何のことか分からず、ゲームに夢中になろうとしたが、背後で何かが動く気配が止まらなかった。

気になって振り返ると、そこには誰もいない。しかし、一度手にした覚えのないリモコンが、いつの間にか手元に置かれていた。そのとき、思わず背筋が凍った。

配信が終わって、コメントを読み返していると気づいた。リモコンの話題を振ってきたアカウントは、全て同じアイコンだった。アイコンは、まるで目の形をしているようで、こちらをじっと見つめているように感じた。

背後で音がした瞬間、振り返ると視界には何もなく、ただ闇が広がっているだけだった。しかし、体は勝手に動き始めていた。まるで誰かに操られているようだった。

何もない空間に手を伸ばし、私自身を動かしている「何か」がいると感じた。目に見えない存在が、私の行動を指示している。逃げようとしても体は動かない。

その瞬間に気づいた。私はただの視聴者で、彼らのリモコンに過ぎなかった。

部屋の空気が一気に凍りついた。背後から迫る気配、それは現実で、私の命を握っていることを悟った。

リモコンは突然、勝手に動き始め、テレビの電源が入った。画面には、私の部屋が映し出され、そこには私が立っている。しかし、画面の中の私は、背後に何か大きな影があることに気づいていない。

そして、そこで私の意識は途切れた。誰かの声で、「リモコンを持って行かれるね」と微かに聞こえたが、それ以上は何も覚えていない。後に残ったのは、テレビに映る真っ黒な画面と、消えたはずのリモコンだけだった。


管理人の考察

この話を読んだとき、背筋がゾッとしました。日々のストレスから逃れるために始めたゲーム実況で、視聴者とのつながりを楽しむはずが、不気味な存在に操られるなんて、想像を絶する恐怖です。

物語の展開は、徐々に違和感が高まるところが魅力的です。最初の「後ろにいるよ」というコメントがただの悪戯だと思わせる一方で、背後の物音が増えていくことで、読者も主人公と一緒に不安感を感じるようになります。これは現実と非現実の狭間を巧みに描写していて、精神的に追い詰められる姿が、ストレスを抱える私たちの心情に寄り添っています。

視聴者からのコメントという形で迫る恐怖も、現代的な要素を取り入れていて秀逸です。視聴者の一体感が逆に主人公を孤立させ、まるで操り人形のように感じさせるのが恐ろしい。特に「リモコンを取ってきて」というメッセージが繰り返されることで、主人公の状況が一層切迫感を増していきます。視聴者が一つの「目」を持っているかのような描写は、恐怖の正体を示唆していて非常に興味深いです。

オチが明らかになると、主人公がただの視聴者であったことが分かり、彼の意思とは無関係に動かされる恐怖が鮮烈に感じられます。この瞬間、私たちもまた、何かに操られているのではないかと不安に駆られるでしょう。自己を失うこと、つまり自分の意志が他者の手によって奪われる恐怖は、現代社会における孤独感や不安感を象徴しているのかもしれません。

この話の怖さは、現実の延長線上にある非現実的な恐怖が描かれているところです。私たちの日常には、いつでも不気味な存在が潜んでいる可能性があります。この物語が教えているのは、もしかしたら私たちも、誰かのリモコンに過ぎないのかもしれないということです。

最後に、主人公の意識が途切れるシーンで物語は幕を閉じますが、その余韻は恐ろしい。私たちもこの物語に引き込まれ、どこかで見えない存在に見られているのかもしれません。リモコンを手にした者は、果たして誰だったのか…その答えは、あなたの心の中にしかないのかもしれません。

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